夏という季節
『明日は真夏日になるでしょう』という天気予報のキャスターさんの声が耳に入ってきました。もうそんな時期なんですね。
私は暑さにめっぽう弱いので、夏という時期はとても苦痛だなぁなんて思ってしまうんですが、それと同時にどこかノスタルジックな気持ちになるのです。
私は音楽を聴くのが好きで、常にウォークマンを持ち歩いていつでも側においているのですが、夏になると必ず聴きたくなる曲があります。
それがこれ、『千と千尋の神隠し』の中に出てくる、『あの夏へ』という曲です。
この曲は映画の冒頭、そしてラストシーンの両方に使用されています(サントラには違う曲名で登録されてありますが)。
ピアノの優しく、どこか寂しさを誘うような音色で始まり、弦楽器や管楽器がそれを邪魔しないようにふんわりと被さってくる。静寂をも曲の一部に取り込んで、胸の中の寂寥感を煽られて私はいつも泣きそうになります。
脳裏には真っ青な空の下、強く吹いた風に大地に根付いた草木がザァッと煽られる様子が思い浮かびます。そう、千尋がトンネルを抜けて湯屋の繁華街に向かうまでの、そして最後ハクと手を離して別れる場面の、あの風景です。
ここを観るとやはり泣いてしまいそうになるのですが、この一夏かぎりの出会い、別れ、というのに自身の経験をきっと重ねているのではないかなぁなんて思うのです。
というのも、夏というのは高校時代まで吹奏楽部だった私にとって、コンクールに向けて血の滲むような練習を重ねていた時期なんです。毎日何時間も暑い中ずっとイスに座って楽器を吹き続ける。何度も何度も同じところを注意される。高音の中音程もなかなか合わなくてまわりにも迷惑をかけて。それでも努力は報われなかったり。
その年のメンバーって本当にその年かぎりで。一緒に吹いてくれる先輩後輩は毎年変わるし、辞めてしまう同期だっていた。だからそう言った意味では「その夏かぎり」の縁、だったんです。報われなかったと悔し涙を拭いながら、先輩には「ありがとうございました」、後輩には「来年も頑張ってね」と、みんなそれぞれ次の道へ進んでいきました。
人間は過去を美化する傾向があるなんて言いますけど、本当ですね(笑)
でもこうしてなにかのきっかけで思い出されることって、やっぱりその人にとって大切でかけがえのないものなのではないかなと思うんです。
夏は私にとって、努力した自分を思い出させてくれる、そんな季節なのかもしれません。
夏と聞いて、あなたはなにを思いますか。